内科学第2講座

和歌山県立医科大学第二内科は、内科2講座2教授制となった昭和29年に開講しました。楠井賢造先生、矢高勲先生、西岡新吾先生、一瀬雅夫先生の先代4教授が築き上げられた当講座を、平成28年7月より引き継がせていただいております。当講座は300人以上の医師を輩出し、和歌山県における消化器内科領域の教育?研究?診療の中心的存在であり、さらに地域医療を担う医師を育成する教育機関としての重要な役割を担っております。

当講座は、消化管?肝胆膵全領域にわたり最先端診療?研究を行う専門領域のバランスのとれた教室です。私は主に胆膵疾患に対する最先端内視鏡?超音波技術を実践し、新しい診療技術の研究開発を行ってきました。前任の一瀬教授はHelicobacter pylori感染と胃癌の研究において、世界的な研究実績があります。炎症性腸疾患の診療では、多数の治験を実施し、最先端診療を提供してきております。消化管内視鏡治療では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)件数が全国でも有数であり、最も難易度が高いと言われている大腸腫瘍に対するESDを実施できる医師が4名在籍しております。肝癌に対するラジオ波焼灼術は県内全域?泉南地域の治療の中心的存在であり、各地域より肝癌の患者さんが紹介されてきており、全国でもトップ10に入る実績があります。

消化管?肝胆膵の全臓器に関する、基礎から臨床研究まで、スクリーニングから最先端治療まで全ての領域を網羅することを教室の基本方針としております。また、消化器内科は急性期疾患が多く、「フットワークの軽い診療姿勢」が重要です。和歌山県内で発症した消化器疾患をできるだけ早急に受け入れ、高度かつ最善の医療を提供できるよう努めて行きたいと考えております。県の医療の中心的役割を果たしているという自覚を持ち、消化器疾患患者の最後の砦として、他施設からの患者の受け入れを積極的に行っております。

内視鏡および超音波等を用いた診断?治療では、最先端診療を実践すると同時に新規技術の研究開発を行っております。一方で、和歌山県は人口移動の少ない県であることから、地域医療を活用した和歌山県全体に及ぶ大規模な臨床研究を積極的に実施し、県民の健康増進に努めております。私の就任後、「きのくにプロジェクト」と称した膵癌早期発見の地域医療連携システムを構築し、和歌山県における膵癌患者の予後改善に努めております。

最後に、全員が一丸となって、和歌山県における消化器疾患の予後向上をめざし、最先端診療?研究を世界に向けて発信し続けていく所存です。

教授 北野 雅之

教育概要

当講座の基本的教育方針として、医局員全員が基本的消化器診療技術を修得し、大学あるいは関連病院に来院する、いかなる消化器疾患患者にも対応できるよう教育しております。また、早期に内科専門医、消化器関連専門医(消化器病学会、消化器内視鏡学会、肝臓学会、超音波医学会)を取得することを目標しております。

当講座の特徴的な教育方針として、消化管?肝?胆膵の全領域の専門医が一名ずつ構成されているグループで診療活動を行い、研修医がそのグループの一員として働くことにより、消化器全領域を偏りなく研修できることが挙げられます。また、内視鏡等の検査の際には、常時指導医とともにペアで手技を実施することとなっており、指導面でも重厚な体制で臨んでいます。

消化器関連専門医取得後は、それぞれの目的に応じた「懐の広い」指導体制を整えております。全ての基本的な内視鏡技術、超音波技術を早期に修得できるよう、それぞれの研修カリキュラムを組んでおります。また、大学で研究活動を積極的に行い、その研究成果を世界へ向けて発信する研究者、最先端診療を実践し県内外から診療依頼を受け、国際学会で内視鏡ライブデモンストレーションを行うエキスパートを多く育成することも教室の重要な役割と考えております。さらに、地域中核病院へ出向し、消化器疾患診療を中心として地域医療を守ることも重要な貢献となります。

初期研修について

  1. 概要
    一般的な内科疾患への診療能力を身に付ける。同時に、消化器系専門診療の基礎を学び、消化器疾患への適切な初期対応、適切な専門医への相談ができるようになる。
  2. 内容
    診療グループの一員として、指導医のもとで、病棟を中心に消化器疾患全般を診療する。シュミレーターによるトレーニングの後に、内視鏡?超音波の検査?治療に積極的に参加する。
  3. 体制
    卒後15−20年目の指導医1名、卒後10年目程度の中間指導医が、診療グループを組んで、指導する。3カ月を基本とし、受け入れ可能人数 10名以内とする。

専門研修について

年次
3 4 5 6 7 8 9 10 11以降
大学病院            
院内救急部
(3ヵ月)
               
内科研修 内科専門医          
消化器専門研修 消化器系専門医    
  1. 概要
    新しい専門医制度に対応している。 消化器研修に重点を置くことで、最短卒後6年後に、消化器系専門医を取得することができる。
  2. 研修内容
    診療グループの一員として、主治医の指導のもと、消化器疾患を偏りなく診療する。内視鏡?超音波検査を含めた基本的手技を修得する。習熟度と希望に応じ、専門的な高度技術である内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)、経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)を専門研修中に開始することも可能である。また、研究活動を通じて、診療上の疑問を科学的に解決する方法を身に付ける。
  3. 教育体制
    病棟?外来での診療、内視鏡?超音波検査、当直などあらゆる業務において、常に指導医がバックアップするのが特徴である。内科学会指導医12名、消化器病学会指導医5名、消化器内視鏡学会指導医9名などが指導にあたる。
  4. 専門研修協力病院
    和歌山ろうさい病院、日本赤十字社和歌山医療センター、りんくう総合医療センター、橋本市民病院、新宮市立医療センター、南和歌山医療センター
    日高総合病院、済生会有田病院、有田市立病院、済生会和歌山病院、国保野上厚生総合病院
    近畿大学、昭和大学、三井記念病院、東京大学
  5. 専門医取得
    内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医、超音波専門医、がん治療認定医、がん検診認定医、胃腸科専門医、カプセル内視鏡認定医
  6. 連絡先
    見学も随時受け付けています。
    ninai@wakayama-med.ac.jp

研究概要

当内科の専門分野である消化器疾患を中心に、特に悪性腫瘍を対象に基礎的及び臨床的研究を行っています。

当科では、症例一例ごとにベストの医療を模索する中で、スタッフが、対象疾患に対する自らの診療のなかで、直面する問題点を辛抱強く追及してゆく過程で自然発生するテーマを対象にして研究を行っています、研究結果が臨床医としての能力向上に何らかの形で役立ち、最終的には医療に還元出来るものとなることを目標としています。

基礎的研究では、臨床教室のみで実施せず、基礎教授との共同研究により高次元の研究を実施しています。特に臨床応用できる基礎的研究(トランスレーショナルリサーチ)に力を入れています。

臨床的研究では、画像診断、内視鏡治療、化学療法等に関する新しい技術を研究開発すると同時に、多施設共同研究を通じて、ガイドラインに引用されるような治療上重要なエビデンスを得る研究を実践しています。

以下に教室の研究テーマを示します。

  1. 消化管、胆道および膵疾患の内視鏡下治療の新規技術開発検討。
  2. 消化器疾患診療に対する画像診断(内視鏡?超音波)の技術革新と診断精度向上に関する検討。
  3. 肝腫瘍性病変を対象にした経皮局所治療に関する検討。
  4. 地域医療連携を活用した膵癌早期診断システムの構築
  5. 消化器癌スクリーニングの精度および効率向上に関する検討。
  6. 消化器系慢性疾患、悪性疾患の臨床疫学的検討。
  7. 上部消化管内腔環境規定要因としての胃酸、ペプシン分泌機構に関する検討。
  8. 各種肝炎ウイルスの感染、増殖動態の解明およびその制御に関する検討。
  9. 消化器癌の chemoprevention に関する検討。
  10. 再生医学を視野に入れた消化器実質組織の増殖、分化、形態形成、apoptosis 制御機構の検討。
  11. 消化器癌の増殖、分化、転移の分子機構の解明および臨床応用に関する検討。
  12. 消化器領域の慢性炎症性疾患の自然史、基本病態およびその制御に関する検討。
  13. 消化管における創傷治癒調節機構および quality of ulcer healing 向上に関する検討。
  14. 消化器の老化に伴う病態に関する検討。
  15. 消化器内科領域の卒前、卒後医学教育法に関する検討。
  16. 消化器癌化学療法の効果に関する検討。

現在、大学院生が進めている研究内容

  1. 消化器疾患に対する内視鏡?超音波を用いた新規診療技術の開発
  2. 消化器癌スクリーニング法の開発と精度、効率向上に関する研究
  3. 消化器疾患の予後向上を目指した地域医療連携システム構築に関する研究
  4. 消化器癌の増殖、分化、転移の分子機構の解明とバイオマーカーに関する研究
  5. 消化器における炎症性疾患の病態生理の解明と治療薬の開発
  1. Research and development of the techniques with endoscopy and ultrasonography for diagnosis and treatment of gastroenterological diseases
  2. Development of new methods for gastroenterological cancer screening and research to clarify their accuracy and efficiency
  3. Clinical epidemiological research to establish the regional systems for the prognostic im